会社の事業とは?事業設定の大切さについて

今回は、事業についてお話します。
「自社の事業は何ですか?」と質問された時、あなたどう答えますか。
例えば、トヨタ自動車の社員に同じ質問したらどのような答えが返ってくるでしょうか?
「世界中の人に、より安全で快適なクルマを提供し続けること」であると答えた社員が居たとしたら、その回答は「0」点です。
逆に言えば、事業をそのように定義してないからこそ、今日のトヨタ自動車の発展がある言っても過言ではないと思います。
 
こんなお話があります。
例えば、アメリカへ旅行に行った事がある人に質問です。アメリカ国内の移動手段は何を利用しましたかと尋ねると、大抵は、飛行機、バス、レンタカーと答えるのではないでしょうか。鉄道は?と聞き返すと、都会のごく一部では地下鉄がありますが、それくらいではないでしょうか。日本では、全国全てに鉄道が張り巡らされており、他府県へ行く交通手段として鉄道はメジャーです。一方、アメリカでは他の州へ移動するのに、鉄道はあまり使わないと思います。飛行機かバスではないでしょうか。そう、アメリカでは鉄道が今日もあまり発達していないのです。世界No.1の経済大国のアメリカなのに、鉄道が全然普及していないのは不思議じゃありませんか?
その理由をご説明します。
昔、もちろんアメリカにも鉄道会社があり、アメリカでの鉄道の普及を目指していました。
この会社の事業方針は「アメリカ全土を鉄道で結び、国民が行きたいところへ導く」としていました。
一見、悪くない事業方針だと思いますが、これも「0」点です。
一方で、遅ればせながらアメリカには飛行機会社やバス会社も誕生してきます。
そして、それらの会社は国民のニーズに応えるべく切磋琢磨し、国民にとってどんどん便利に改良されていきました。
そんな会社を横目で見ていた鉄道会社がどう思ったかと言うと、
「確かに悔しいが、我々の事業は鉄道だから、あくまでも鉄道にこだわるべき」でした。
その後、飛行機会社やバス会社はどんどん改良を繰り返し、国民にとって非常に便利な移動手段として不動の地位を確立していきました。
一方、鉄道会社も鉄道でなんとかお客様を引き付けたいと検討しましたが、飛行機会社やバス会社の変革スピードには追いつかず、しまいにはお客様を飛行機会社やバス会社に奪われていってしまいました。
 
ここで、なぜこの鉄道会社が衰退してしまったかと言うと、事業の設定をミスした事です。
「アメリカ全土を鉄道で結び、国民が行きたいところへ導く」がよろしくなかったのです。
 
アメリカ国民は、隣の州へ行くのに、シンプルに安全に快適に無事につければ、交通手段はなんだっていいのです。これがお客様の本質的なニーズです。
それを鉄道会社は、鉄道にこだわり過ぎたあまり、後から出てきた飛行機やバスが普及してきても、自分達の事業は鉄道だと頑固に方針を変えなかったから、どんだけお客様を取られても、気にしなかったのです。
 
結果、お客様は全て飛行機とバスに取られてしまい、鉄道を使う人はいなくなり、この鉄道会社は潰れてしまいました。
 
今一度、この鉄道会社の事業を振り返ると、
「アメリカ全土を鉄道で結び、国民が行きたいところへ導く」となっていましたが、この事業方針を「国民が行きたいところへ導く、移動手段を提供すること」としていれば、後から競合他社が参入してきても、必要に応じ柔軟に適応できたと思います。これからは飛行機だ!となれば、この会社も生き残るために飛行機事業に舵をきる事もできたと思います。
そう、国民は鉄道で移動したいとは一言も言ってないにも関わらず、移動=鉄道でしょ!とこだわり続けてしまった事がアダとなった例です。
 
だから、今日アメリカでは鉄道が流行っていないのです。
 
ここで、最初のトヨタ自動車の事業に戻ってみましょう。
「世界中の人に、より安全で快適なクルマを提供し続けること」とトヨタ自動車が事業方針を定めていたら、将来クルマ以外の快適な移動手段が他社から出てきた時に、クルマは衰退していき新しい移動手段にとって代わり、トヨタ自動車は衰退していくでしょう。
トヨタ自動車のホームページで、経営方針やトップメッセージをみてください。
「トヨタは安全で快適な移動手段を提供する」的な事が書かれています。
トヨタ自動車は、クルマにこだわってないのです。よって、将来的にトヨタ自動車は、鉄道業界や飛行機業界に参入してくる可能があるのです。
 
もう1つ分かりやすい例をあげると、
ある化粧品会社が、
「化粧品を通じて、世界中の女性をキレイにする」と言う事業方針と、「世界中の女性をキレイにするためのあらゆる方法を提供する」という事業方針にすれば、変化がめまぐるしい世の中にどちらが生き残りそうか容易に想像がつきますよね。
 
最後に
いかがでしたでしょうか?
事業の設定は、非常に重要です。会社が永続的に繁栄するかどうかにもかかっています。
そして、その設定には、お客様の本質的なニーズをしっかり見つけ、それに沿って柔軟な対応ができる事業方針の設定が必要です。